『とーびんと』 A5版
| Ⅰ 42・7 | 88頁 |
| Ⅱ 42・8・20 | 67頁 |
| Ⅲ 42・10・12 | 72頁 |
| Ⅳ 42・12・30 | 84頁 |
小学校を三年までしか行けず、後は男子守りや傭陣として働かねばならなかった工藤六兵 翁の抜群の記憶力とは、一体どこから来たのだろうか。問いを出すと、たちどころに答えが返ってくる頭のよさ。奥村先生の手引きで知った語り手だったが、次第に、工藤翁の知っていることはみんな聞こうと思いはじめて、通い、「蛇むこむかし」にその時の昔話を収録し、さらにロバート・アダムス氏と一緒にお邪魔したときに聞いたものを加えると二十五話になると知り、とにかく知っているだけ聞こうと思った。そして第一集に六十話を収録しているから、二度ほどお聞きしたものをまとめたものだったかも知れない。ガリ版が出来上がったので持参すると大変喜ばれて、次々に思い出して語ってくれた。第二集には四十四話。その間に自分の生い立ちを刻明にメモしてくれたりしたので、跡にそのメモをもとにして「ある伝承者」を書いた。第三集は十月に三十六話、第四集は四十八話を収めたが、その頃に病院に入院されたという連絡があり、見舞い状に、二百話に数話足りない旨を書き添えてやると、それを思い出してくれたという知らせがあり、春になって体を回復を待ってお聞きに行くと約束したのに、そのまま逝くなってしまわれた。かえすがえすも残念なことであった。後年『とーびんと』を一冊にまとめて出版したが、その昔話の中に、多く、若者が集まる木小屋での話があって、昔話伝承の新しい発見であることに気付いたのだった。抜群の記憶力の人であった翁の姿は、お隣の工藤兵次翁と共に忘れるわけにいかない大きな光を投げかけてくれた。