東北文教大学 附属図書館

『飯豊町昔話集』 解題

『飯豊町昔話集』 46・9 B6版 92頁

 飯豊町の援助で、太平・新沼・高畑地区の民俗調査を置賜民俗学会として実施したのが、その年の夏休みであった。冬季の積雪と過疎のために離村することが決定したことから町の協力を仰いでの調査であった。木地作りの村であったこの地は単なる山村とも違った意味合いもあり、非常に豊富な昔話が出てきたのに、まずびっくりした。しかも地区の方々の非常な協力ぶりもうれしかった。木地作りはもっぱら冬の仕事であったから、家の中ではそれぞれ分業が行われ、老婆の仕事は孫に昔話を語ってやることであって、孫が刃物の転がっている炉端にさわがないように、台所に掘りコタツを作り、そこが昔話の「語り」の座であるという発見は、伝承の一つとして大きいものであった。なるほど本格昔話の語りもしっかりしていた。渡部もとさん、嘉藤ともさん、土屋ひろえさん、渡部正義さんなどのすぐれた語り手を知った。昔話調査は二日間だけで、五十話に及ぶものであった。その私たちを追いかけるようにNHK仙台の記者が現われ、「山姥はどこへ行ったか」というVTRを仙台で撮ったのを思い出す。後に「山合いの村」という調査記を書いたが、ここで「手なし娘」「馬追い鳥」の昔話を私ははじめて聞いたのだった。また貝吹き山の山賊と「牛方と山姥」とが、昨日の出来ごとのように語っていただいたのも忘れない。