『米沢市簗沢の昔話』 47・11・30 B6版100頁
置賜民俗学会の調査は、この年簗沢地区を対象に行なわれた。地元の郷土史研究会の方々の献身的な全面的援助を得て、すばらしい成果を上げることができた。簗沢地区は隣の田沢地区と共に江戸三百年のあいだ、城下町米沢に薪を供給するために「木流し」をしてきた地区で、その経験者がまだ残っていたこと、「もやし作り」は現在も行われ、小野川温泉の名物になっていることなど貴重なものを調査させてもらった。木流しの経験者であり、民謡の大家でもあった宮下昇さんにお会いして、これまたたくさんの昔話を聞く幸運があった。宮下さんの語りはビクターレコードに収められたが、いかにも木流し衆の昔話らしく、宮下さん独自の語り口に酔ったものである。文字化してしまうと消えてしまう語りとは、まさにこういうものだろうと思ったものである。形式譚の「おっかなくて、おがしくて、あわれな話」は小国町の塚原名右ヱ門さんから聞いたが、それが宮下さんの語りの中にも登場し、県内二話になったのを知ってびっくりもし、うれしかったことを思い出す。また、マムシの眼が下熱剤として最高などという話もびっくりしながら聞いたものである。御世話下さった多くの方々を一人一人思い出しているところである。