大学紹介

令和4年度入学式 学長式辞

東北文教大学人間科学部、そして東北文教大学短期大学部に入学された皆さん、御入学おめでとうございます。本学には、山形女子短期大学の開学以来56年の歴史と、東北文教大学の開学以来12年の歴史があります。これらの二つの歴史の流れは合わさって、本学の学風とも言うべき温かい雰囲気となり、現在の若々しく力強い勢いとなりました。私は、本学の温かい雰囲気がとても好きです。本学で学んだ皆さんの先輩たちは、その温かい雰囲気を大切に継承し、実によく学び、確かな知識と実践力を身につけて社会に巣立っていきました。それは、本学が教員採用試験や介護福祉士国家試験の合格実績において大変優れた結果を出していること、あるいはさまざまな分野への就職に優れた実績を残していることにおいて、目に見える形となって現れています。

私は、この優れた「まなびや」である東北文教大学、東北文教大学短期大学部に入学された皆さんを心から歓迎します。そして、今日の良き日を心待ちにされていた保護者の皆さまには、お子様の御入学をお祝い申し上げます。また、新年度の始まりのお忙しい中、御臨席を賜りました教育後援会、保護者会、東北文教大学「耀」同窓会、東北文教大学山形城北高等学校、東北文教大学附属幼稚園、そして社会福祉法人敬愛信の会の御来賓の方々には厚く御礼申し上げます。本日、新入学の学生をともに歓迎してくださり、感謝の気持ちでいっぱいです。

さて、本日、本学の学生として、その第一歩を踏み出した皆さんに、学長として是非伝えておきたいと思っていることがあります。それをこれから二つお話しします。その第一は、本学が行っている研究の特徴と教育の方針、そしてその根底にはどんな思いがあるのかということについてです。東北文教大学は、人間科学部と短期大学部ともに、人間の心理や文化、教育や保育、福祉や介護について、それぞれの専門的知識を深く掘り下げ、より確かな知見を得ることを求めて研究活動を行っています。そしてそれと同時に、それらの専門的知識と技術をしっかりと継承し、社会で実践し、さらに発展させていく優れた人材を育成する教育を行っています。人は、人の中で育ち、人と関わり合い、人を支え、人に支えられて生きていく存在です。それを深く理解し、優れた専門性と豊かな人間性を持ち、社会に貢献する実践的な人間を育てたい。これが本学の教育に対する基本的な方針です。そして、その基盤には本学の建学の精神である「敬愛信」という理念があります。「敬愛信」という言葉を私は次のように捉えています。「敬」は尊敬の「敬」。それは、人が自分自身を高めようと学ぶ、その学びの原動力となるものです。「愛」は愛情の「愛」。人が誰かを、あるいは何かを大切にしようとする思いであり、人と人とをつなぐ絆となるものです。そして「信」は信頼の「信」。それは、まだ見ぬ未来に向かって生きていく意志となり、人と人とのつながりを支えるものであると思います。本学の研究と教育の根底にある「敬愛信」の理念を皆さんがそれぞれにおいて感じ取り、大切にしてほしいと願っています。

新入生の皆さんに伝えておきたいもう一つのことは、これから始まる学生生活に対する私からのアドバイスです。私の大学での教師生活は今年で40年になります。これまで実にたくさんの学生と接してきました。その結果、学生生活を成功させるためにはどうすればいいのか、何が大切なのか、それがわかるようになりました。私自身学生だったときの失敗や成功の経験から得られた教訓も含めて、皆さんに学生生活を成功させるための心構えを伝えておこうと思います。

もっとも大事なことは何か。それは、自分は将来どんなことを実現させたいのか、その思いを持つことだと私は考えます。それは、ぼんやりとしていてもかまいません。おおらかに考えていいのです。まずその思いを心に抱き、それに向かって、今やるべき事を少しずつやり遂げていくこと。そして、勇気を持ってさまざまなことに積極的に挑戦することです。そうすれば、自分のしたいことが具体的に見えてきたり、進むべき新たな道筋が見えてきたりすると思います。

私自身は、職業として教育の道を選びましたが、そのきっかけは、イギリスの『チップス先生、さようなら』という小説を読んだことでした。大学に入学する前、自分はどういう方向に進んだらいいかわからなかった頃に、たまたまその小説を読んで、さらにその映画も観て、その当時の私は、自分もこういう世界で生きていきたいと素朴に思ったのでした。それをきっかけにして、将来への方向を思い定め、大学に入学してからは、様々なことを学んだり経験したりして、自分が実現させたいことを見つけながら進んできました。道は決められた道だけでなく、いろいろあるということもわかりました。本学に入学された皆さん、どうか将来への思いを持って、日々の学修や実習に真摯にとりくみ、自分の道を切り開いていってください。

次に大事なことは、これから始まる自分の学生生活をマネジメントすることです。いよいよこれから、さまざまなことを学修していく日々が始まります。陸上競技で言えば、フルマラソンを走るような長いレースです。しっかりとゴールまで走り抜けるには、心も身体も健康な状態でいられるよう自分で自分を管理する意識がとても大事になってきます。学生らしい生活とはどんな生活か、それを一概に決めつけることはしませんが、自由であるということを自堕落であるかのようにとらえているとしたら、それはとんでもない勘違いですから注意しなければいけません。「よく学び、よく遊ぶ」ことができるよう、時間や生活習慣を自分でマネジメントし、健康な状態を意識的に作るよう努力してください。このことと関わって言えば、この4月からは、民法が改正されて18歳から成人として扱われます。未成年としての保護が外されるのです。その危険性を忘れてはいけません。過度に恐れる必要はありませんが、成人としては初心者マークなのだということも意識して、しっかりと自分のマネジメントに努めてください。

皆さんへのアドバイスの最後として、友人や先輩とのつながりを作ることの大切さについて、改めて強調しておきます。大学生として過ごす数年間は、人生の最良の時期ともいえる期間です。しかし、それを実感するのは、人生を後から振り返って思うときでしょう。学生として毎日を懸命に生きているときは、苦しいときもあれば方向を見失いそうになるときもあるものです。そんなとき、ひとりぼっちでいることは辛い。良き友人がいること、あるいは良き先輩がいるということが支えになるものです。本学は、皆さんをサポートできるよう大学として支援体制を整えていますので、必要なときは積極的に活用してほしいと思いますが、友人や先輩の存在というのは、そんな時とても心強い支えとなるでしょう。共に学ぶ仲間として、信頼できる友人や先輩とのつながりを持つことができるよう、心がけてみて下さい。

私が願っているのは、新入生の皆さんのすべてが、自分の可能性を信じて、それぞれの将来への夢や志が実現できるよう、これから始まる学生生活を一歩ずつ元気に進んでくれることです。本学の教職員は、皆さんが卒業の日を迎えるまで、皆さんの学びを指導し、惜しみない支援をします。皆さんが充実した大学生活を送れるよう祈念して式辞とします。

令和4年4月6日
東北文教大学
東北文教大学短期大学部
学長  須賀一好