86 難題聟

 むかしむかしあったんだけど。
 ある村さすばらしい長者さま、金持ちな家あって、ほこさじんつぁと娘しか住んでいねんだけど。娘は年頃になって、聟でももらいたいなぁていう頃なんだけど。ほしてなんぼ聟もらってもその聟、一週間ぐらい居っど、みないねぐなってまず八日と続かねんだけど。
「おかしいこともあるもんだ」
 ある時、その村さ一人の若衆来て、ほして、「あそこの家で聟欲しいていうこと聞いて来たげんど、おれば貰わねべがっす」て聞いだんだど。したれば村人ぁ、
「ああ、駄目だ駄目だ。あそこさなんぼ行ったて、一週間と居らんねんだ。あそこさ行ったら居らっだもんでない。駄目だ駄目だ」
 ていうわけだど。
「なしてだべ」て聞いたれば、
「そこの家の娘はな、一週間ぐらい何事もない。さぁ一週間すぎだって言うたんだらば、夜中むっくり起きて、お墓んどこさ行って、ほしてお墓ひっくり返して、ちっちゃこいおぼこ死んだなていうんだら、ほの赤ん坊死んだな引張り出して食うんだ、ほら、股(もも)たぶふっちゃいて(破って)、ほしてむちゃむちゃ食いはだつ(食い始める)。んだからそういう風な見っど誰もいらんね。ほだいしているうち、聟も食っでしまうべ、ていうわけで、誰もほこさ居つかねなだ」
 て言うたら、その男ぁ、
「はぁ、ほいつぁおかしいもんだな、よし、んだらおれ行ってみる。おれ行って試してみる」
 て行ったんだど。ほしてほの家さ行って、
「ここの家では聟どの欲しいなていう話聞いて来たんだげんど、おれ、聟にしていただがんねべがっす」
 て言うたんだど。ほうしたらそこの家で、
「ああ、んだか、んだか、聟になって呉(け)らっしゃい」
 て、聟になったんだど。ほうしてやっぱり一週間ぐらい何事もないけど。ほうしたら隣で赤ん坊が逝くなったんだど。
「ははぁ、今夜あたり危ないな」
 と思っていたらば、知しゃねふりしったらば、やっぱり夜中になったれば、むっくり起きて、きちんと鉢巻きなのして、タスコなの掛げっだんだど。ほして出はって行ったんだど。聟どのは見(め)けらんねようにこそっと後ついて行ったんだけど。ほうすっど娘はお墓ひっくり返して、中から箱ひっ取って、はいつばエッとぶじょごして(ぶちこわして)、中から赤ん坊出して、股(もも)たぶ食いはだったんだど。むちゃむちゃ、むちゃむちゃと、ほして口の辺り真赤にして時々うしろの方なの向いて、ケタケタ、ケタケタなて笑うのだど。
「ははぁ、これぁ話の通りだ。恐かないもんだ」
 と思ったんだど。まだ知しゃねふりして、先に帰って来て寝たんだど。
 ほして次の日になったんだど。ほうすっど、娘起きねうち早く起きて、ねじり鉢巻きして、出刃包丁もって、お墓のうしろさ隠っでいだんだけど。ほうしたれば、また娘来たけど。ほしてお墓さ手かけんべと思ったとき、聟はミシーッとその手おさえたんだど。ほして、
「何ていうことすんなだ。とんでもないことするもんでない」
 ごしゃえだんだど。したれば、
「ああ、悪(わ)れがった、悪れがった。おれ、悪れなだからどうか勘弁して呉(け)ろ」
 て言うなだど。ほして一生懸命詫びるんだど。ほして箱の中からおぼこ出して、
「あんつぁん、あんつぁん、これは本当のおぼこでないなだ。これはお菓子でこさえだおぼこだ」
 ていうわけだど。聟はたまげて見たらば、みな同じ型のおぼこだけど。
「んだら、なしてこだなことすんなだ」
 て言うけど。娘は、
「聟の度胸だめしだ。これぐらい度胸ないど、おら家の聟にならんねなだ」
 て言うけど。
「あんつぁ、金持なていうの、長者なていうの、意志の弱いなではとても引継いで行かんね。度胸もなくてなんねえし、意志も強くなくてはなんねえし、このぐらいのことでぶったまげ、ひったまげするようでは、おら家の後継ぎならんねなだ。んだから、おれ、こういう風にして度胸試し、悪いとは思うたげんど、して、今まで誰一人として度胸のある男は来ねなだった。あなた一人がええ度胸して、んだもんだから、おらえの家の身成は万々歳だと思うから、おら家の聟にいついつまでもなって呉らっしゃい」
 て言うて、ほこの家もらって二人仲よく暮したけど。ドンピンカラリン、スッカラリン。
(集成「謎解聟」系)
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