85 橋の渡り初め

 むかしとんとんあったんだけど。
 ある村で荒(あ)んばれ川で、ときどき橋流さっで、そしてそこ渡って百姓しに行かねど、田も畠も何とも仕様ないんで、毎日人足出て、みごとな板橋完成したんだけど。ところがこの橋が出きて、お祝いすんべていう朝げんなったれば、貧乏くさい乞食(ほいと)みたいなお坊さまが来て、誰も渡り初めもしねうち、
「どうか、おれば通して呉(け)らっしゃい」
 て頼んだんだど。村の人ぁ乞食みたいな坊さまば見だけぁ、
「こら、この乞食坊主、渡ったりしてなんねぞ、まだ誰も渡り初めもしねんだから、絶対通さんね。にさなような者は泳いで通って行け」
 て言うたんだど。したれば、
「こんなに頼んでも分んねごんだら仕方ないっだなぁ」
 て言うけぁ、かぶってた笠ひょいと取ったけぁ、流れの川さ浮かべて、ほいっちゃのったけぁ、杖(つれ)棒(んぽ)ば櫂の代りにして、スイスイ、スイスイて渡って向う岸さ渡って行ったと思ったけぁ、その坊さま言うわけだど。
「一週間ぐらいのうちに、部落さ大火でもなければええがなぁ」
 なて言うて何だか、どこさともなく消えてしまったんだど。はいつ聞いっだ村の人ぁ、
「いや、これは大変なことになる。今んな、きっと仏さまにちがいない。こりゃ困ったもんだ」
 こだいしているうちに、
「どこそこの家の御飯が赤くなった」
「乞食坊主いじめたとき、大火になって一軒二軒残ったばりで、みな焼けたことあった。こりゃ大変なことなった」
 ていうわけで、いろいろ念仏したり供養したりして、ほして毎晩、部落の人だ夜廻り立って見張り番をして気つけて、火事出ねように一生懸命になったんだど。ほして何もないがったげんども、きっとあのお坊さんが仏さまでないがったべかて話になったんだど。ドンピンカラリン、スッカラリン。
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