76 お月さまの兎

 むかしとんとんあったずま。
 あるところで十三夜の月は人間のお月見、十五夜は動物のお月さまを迎える日だったんだど。そしていっぱいの動物がお月さまさお供えするもの、お猿さんが栗だとか、ほら、ネズミさんがお米とか、あるいは馬が西瓜とか、牛が瓜だとかて、いろいろなもの持って、皆が集まったんだど。兎はもさもさしてっから何にもみんなに持って行がっで、持って行くものないんだけどはぁ。んでは何とも仕様ない。お月さまお出(い)でなるに、お土産一つお上げさんね、なて困ったもんだ。仕方ない。んだら、おれ、火焚いておれの体食ってもらうべはぁていうわけで、どんどん十五夜の晩に火焚いて、兎はパッとそこさ飛び込んで、体食ってもらう勘定ではぁ、飛び込もうとしたら、十五夜お月さま、長い手伸ばして、いきなり月の世界さ兎ば連(せ)て行ったんだどはぁ。ほして、
「お前の心根が非常にやさしい。大好きだ。おれの国で暮さねが」
 て言うわけで、今もって十五夜お月さまには、兎がいっぱい居るんだど。ドンピンカラリン、スッカラリン。
(集成「十二支由来」系)
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