73 物識りじんつぁの御帛かつぎ

 むかしむかし、ゃっぱり楢下の宿で、ある物識りじんつぁが、こういうこと聞いて来た。「光りものが飛んできて、バダッと落っだ場合、ほいつ消えねうちに〝銭倉拾った〟て言うど、銭倉授かっす、米倉拾ったていうど、米倉授かる」
 こういうこと聞いて来た。 「いや、誰さも教えらんね。おればり一つやってみんべ」  ほう考えているうちに、ある晩、夜道ずうっと用達して帰っど思って来たれば足元さものすごい光りものがボダーッと落っだど。あわてたそのおっつあんが、「銭倉拾った」て言えば何のことないっだげんども、「米倉拾った」て言うつもりが、結局、「小盲拾った」て言うた。ところが奥さんさ生まっだ子ども盲だったということだ。んだからあんまりそういう風に御帛かつぎはええことは当らねで、悪れごとは当っから、するもんでないということだど。ドンピンカラリン、スッカラリン。
(集成「米倉小倉」四一二)
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