67 大岡裁き ― 盗んだ金キセル ―/H3>  むかしとんとんあったずま。
 あるところで金キセルが盗まっだ。誰だべ、彼だべ、八五郎だべか、熊さんだかなて、いろいろ長屋あたりでも話題になったげんども、誰だか彼だかさっぱり分んない。ところが金のキセルで喫(の)んでたていう訴えがあった。「よし、取捕えろ」て言うわけで、御用御用で入って行ってとり捕えたところが、
「これは、おれのキセルだ。元々おれのキセルだ。他人にとやかく言われることない」
「いや、はいつぁ、おれなだ」
 おれなだ、われなだて喧嘩になった。ところがお奉行さま、
「よし、んだらば今からキセルのガンコさ煙草つめて叩(はた)け」
 ほうしたれば、元から持ってだ人は、手きまってるもんだから、キチンと千切っては叩(はた)き、千切っては叩き、大きさ同じだったど。盗んだ奴は大きいがったりちっちゃがったり。ちっちゃがったり、大きいがったりして落付かねがった。それ見っだけぁ、お奉行さま、
「これ、無礼者、このようにはっきりしているではないか」
 て言うて、煙草の千切り方でおさえらっだ。ドンピンカラリン、スッカラリン。

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