55 杞という人

 むかしむかし、宋の国に「杞」という人がいた。その杞という人は、
「いや、こだいいっぱい雪降って、一どき消えっど、なぜなんべ」
 て心配した。
 また夏の夜、満天下の外さ出て、お星さま眺めて、
「いやいや、あだいいっぱいのお星さま、一どき落っで来たら、みな死んでしまわんなねべなぁ」
 ミミズなの、この土食ったら、どの土食うどええなだべ、なて何にもならねこと心配する人だけ。んだから今でも何にもならね馬鹿くさい心配することを、「杞が憂れう」「杞憂」ていう言葉が、その杞ていう人から出た言葉だど。ドンピンカラリン、スッカラリン。
>>烏呑爺 目次へ