54 『件』の由来

 むかしとんとんあったずま。
 むかし、天竺(てんじく)の国にお釈迦さまていうえらい人いだんだけど。ほしてそのお釈迦さまがあるとき、バタバタ腹痛くなったんだど。むかしは「シャク」ていうた。そのシャク起こした。
 ところが何(なん)た薬飲んでも、何してもなかなか治(なお)んね。みんな弟子どもだ集まって相談したげんども、何とも仕様ない。ほしたらお釈迦さまはこういうことおっしゃった。
「はるか遠い東の国に、日本ていう神国がある。そこは非常に薬草の多い国で、そこで作った薬草飲むと治っかしんない。誰かほこさ行って薬草の薬をもって来て呉(け)ねが」
 こういう風に言うた。ところが、燕が、
「ほだなお安い御用だ。一とび何十里と飛ぶなだから、すぐ行ってすぐ持って来て呉(け)る。ベチャカチャ、ベチャカチャ」
 ていうて飛び立った。幾日、幾十日経(た)っても燕は一つもその薬ていうもの持って来ない。口ばっかりだ。ペチャカチャ、ペチャカチャて口数ばかり多いげんども、絶対もって来ね。
 ところがある日、印度の牛の一種で「件」て書いた、クダンて読む動物いた。そのクダンが見るに見かねて、
「おれが東の国、その日本さ行って、ほしてその薬草持って参ります」
 て行った。足はのろい。山をよじ、川を漕いで、海を渡って、ほして日本さ来て、ほの薬求めてまた帰って行った。一年・二年・三年とその年は過ぎて行った。ほしてお釈迦さまさ辿りついた時ぁ、九年目だった。
 で、「お釈迦さま、お釈迦さま、やっと戻って参りました」て言うた。
「ああ、やっぱりお前のろいげんども、結局確実であった。本当に持って来て呉(け)だんだな」
 こういう風になったんだど。んで今でも遅くても絶対間違いないていうこと、つまり借金の証文さなの、返済期間は何月の何日、よって「件」の如して書いた。「件」ていうのはその動物から来たそうだ。ドンピンカラリン、スッカラリン。
(集成「十二支由来」系)
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