53 夢見ばなし ― バッタリと鬼 ―

 むかしとんとんあったんだけど。
 あるところに古いバッタリ(水車)あったんだけど。ところかそのバッタリさ、いつから住みついたもんだか、鬼共が住みついた。
 ほの、ずっとむかしの鬼はあんまり大きくなくて小さい鬼で、ほして人ば恐っかながった時代もある。聞くところによっど異民族ば、みな鬼ていうた時代がある。最近、鞍馬の山さ、そっちこっちさ出た鬼、天狗ていうのは白人が来たんではないかという説がある。あるいは小(ち)っちゃこい鬼ていうのはエスキモー人種をさしているのではないか。ほだなことはどうでもええげんども、いつから住みついたか、ほの鬼がいて困った。
 ほこさ村の子どもたちが、鬼退治、腕白なばり集まって行った。五六人して。ほうしたれば、やっぱり鬼、住(す)まかいして出はってきた。
「よし、赤鬼、こりゃ背負い投げ」
 横からきたのは払い腰、前から来た奴はトモエ投げ、一緒に来た奴は鉢合せ。片っ端からやっつけてしまった。割合い弱い鬼だ。ところが最後に残った一本角。こいつは強い。二本角はたちまちやっつけだげんど、一本角は真正面から向ってくる。はいつ避けにししゃます(手を余す)した。やっと一本角のツノおさえた。おさえたげんど、どっちゃもこっちゃも行かね。こいつは強い。汗ふつふつたらして、ほして、
「くそ、どっこい」
 なんぼ頑張っても分らね。そうしたけぁ、家の親父から、
「何、ほだい頑張っていっどこだ」
 はっと目覚ましてみたれば、一本角だと思ったのは、自分のチョンチョコおさえて、一生懸命頑張っていだんだけど。して、その古バッタリも夢だけど。ドンピンカラリン、スッカラリン。
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