49 二反の白

 むかしとんとんあったずま。
 仲の悪(わ)れ嫁と姑いだんだけど。ほしてあるどき、嫁が戸(と)表(もて)さ行ったれば、一つの墓見(め)けだんだど。
「ははぁ、平清盛の墓だな、こりゃ」
 て、清盛の墓見(め)けで来たて、姑かかさ言うたれば、
「何、どこで」「こういうどこだ」「あいつなの、加藤清正の墓だから」「加藤清正でないな、平清盛だべな」「ほんない」
 また、ほの姑かかはサイショだ、サイガツだで論判したことあるんだけど。ほして、「サイショだべ」「サイガツだ、サイガツ二つ実ったべ」
「んだて、実(な)ったてサイショだ」
 て、頑張るくらいムンツン(つむじ曲り)なんだけど。ほして二人ぁおさまりつかねぐなってはぁ、
「んだらば、お前は平清盛だて言うべし、おれぁ加藤清正だていうべし、清の字ぁ間違いないっだげんど、こりゃ、んだらお寺さまに裁判してもらうべ」
 て言うわけで、
「ほの、清盛にしてけらっしゃいな」
 て、嫁ぁ白木綿一反持って行ったんだど。
「ん、よしよし」
 お寺さま、引き受けた。こんどは姑かか、
「清正にしてけろな」
「あぁ、ええ、清正でええ」
 ほして、二人とも頼んでいだもんだから、明日の裁判に勝つ勘定だも、ほれ。ほこさ、お寺さまぬくぬくと行ったけぁ、
「お寺さま、清盛だな」「ううん」
「ほんねべなっす、お寺さま、清正だべなっす」「ううん」
 返事しね。
「あれはな、二反の白、ただとりの墓ていうなだ」
 て、お寺さまに、仲わればっかりで、反物二反、ただ取りさっだけど。んだから姑と嫁なていうな、仲よく暮さんなねなだけど。ドンピンカラリン、スッカラリン。
(集成「二反の白」四八五)
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