47 茸の化物

 むかしとんとんあったんだけど。
 ある村に古いお寺さまあって、そこには和尚さん一人だけ住んでいだんだけど。ところが夜な夜なそこさ化物が出る。 ほして化物、夜おどり踊る。
   月夜の晩は ああ、カックリカ カックリカ
   みな出て踊んべ カックリカ カックリカ
   ああ、和尚さんはカックリカ
 はいつ見っだ和尚さんが出はって行って、和尚も踊った。同じに手足動かしてカックリカ、カックリカて踊った。
 どさ行くべと思って見っだ。ほうして明け方なったれば、スウスウとみないねぐなた。
「畜生だ、どさ行くべ」
 と思って和尚さま見っだれば、表の銀杏の木さ、ぴたぴた、ぴたぴたみなふっついだ。ねつく見たれば、はいつは茸だっけ。 ほして薄ぼやっと光ってだ。月夜の晩に。
 次の日もまた踊りおどった。
   月夜の晩に ああ、カックリカ カックリカ
   みな出て踊んべ カックリカ カックリカ
   ああ和尚さんはカックリカ
 て、同じ調子で踊った。ほして和尚は次の晩言うた。
「こりゃ、にさだ。明日から来っどきには、尻洗って来い」
「はい」
 ほしてピタピタ、ピタピタと、また銀杏の木さくっついてしまった。
 ほして次の晩、またのらりくらりと出はって来て、踊り始まったけど。
「こりゃこりゃ、尻洗って来たか」
「はい、洗って来た」
 ちゃぽん。次から次へと鍋さお湯煮立てては待ってだ。
「こりゃこりゃ、にさも尻洗って来たか」
「はい、洗って来た」
 ちゃぽん、すぱっと茸、尻洗って来た茸はみな和尚に食っだけど。ほれから決してほの古寺さ化物出ねがったどはぁ。 ドンピンカラリン、スッカラリン。
(集成「宝化物」系)
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