40 土用丑

 うんと流行(はや)んない肉屋があっかったと。流行んなくて困っていたとこさ、平賀源内が来たと。そしたば、
「おらえの家は流行(はや)んねくて、こりゃ食っても行かんねようだ」
 と、ばさま、くどいたと。
「はァ、そうか」
 と、源内は、「何か紙ないか」と紙をもって来させて、思いきって大きく、
 〝土用丑・土用うなぎ・平賀源内〟
と書いて窓さ貼って行ったと。そうしたところは、その人は日本でも有名な学者だと知って、あれ位偉い人さえも賞めて食って行ったもんだれば、確かにうまいに相違ないというもんで、それから誰も彼も買いに来て、繁盛(はや)ってはやって、その店は大繁盛だったと。
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