29 団子の木  

 まいど、?いで食いようも知らねぇような馬鹿な人ばりだったそうだ。その頃、木という木にはぺろっと団子が実ったり、餅がなったり、素晴らしいもんだったと。そんで木の肌は随分赤くて美しいげんども、さっぱり実のなんないのは、団子の木一つばりだったと。そんでその綺麗なのに、団子などなったら、すばらしく綺麗だべとて、よくみんな言うかったと。ほだげんども、実(な)んねがったと。
 とにかくそういう風で、何さもかにさも実るもんだから、人も?いで食いようも知らねで、ただ木の下さ行って大口あいて待ってる。そいつさ団子落っでくれば大口あいて待ってて、食って飲んでやり、餅ァ落ちて来ると食って飲んでやり、してたもんだと。あんまり情ないもんだから、そっちこっちの木から落っだの拾って来て、団子の木さチョコチョコと刺して、木という木さ実るようになったというのが、団子結(ゆ)つける始まりだと。どーびんと。
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