27 仲のわるい金持

 村に二軒の金持いたったと。そして仲わるくて毎日喧嘩ばりしったと。おら家の田の入水、よけいに持って行って、おら家のばり皆水止めただの、いや、境の草むしってしまったとか、と、毎日喧嘩ばかりしていたったと。そんで丁度孫が片一方は男の子、もう一方には女の子がいたったと。そして晩方になっても来るざァなくて、まずどっちも孫探(た)ねをしたと。
 そういう時なので、喧嘩もしていらんねくて、そっちこっち孫探(た)ねしたところが、裏の地蔵さまの前に、ネブタの花、二人は折って、そいつを当てて眠っていたと。そんでどっちの金持も、
「ははァ、子供は本当の人間の、毒のない心というもんだ」
 と感心したと。んだから、ネブタの木は合歓の木と書くのだと。
>>とーびんと 工藤六兵衛翁昔話(二) 目次へ