18 闇はらい 

 まいどは家など拵(こさ)うなんていうこと知らない前岩穴にみな住まかいしったもんだと。
 ところが人ざァ野蛮で喧嘩などばっかし通ししていっかったと。そうしたば、
「暗いざァ、わるいことだから、昼間ばりも明るくするように……」
 と、ありだけの人、箒持(たが)って岩穴の中、うんと闇はらい、すすはきみたいに払ったと。なんぼ払っても闇はさっぱりとれなくて、やっぱり闇だったと。
 そしてお釈迦さまが来て、僅かばりのお灯明もって来たと。お灯明をそこさ点けたらば、闇はすかっと晴れて明るくなったと。
 んだから、ごじゃごじゃとばりいないで、お灯明ざァ、うんと物識りの立派な人がお話だごで。そいつ教えらっで喧嘩などなくなったごで。
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