17 釈迦の鼻糞 

 お釈迦さまは非常に、務めということについては厳重な人だったと。そんで多数の弟子もってるもんだから、お説教始まる前には、必ず目ヤニや手を綺麗に洗ったり、口をゆすいだりして、壇に着けと毎日言ってたと。
 ある日、お釈迦さまも、鼻糞を僅か喰付けてたと。そんで弟子の運林坊というのに、こいつはお釈迦さまが大変可愛がってる小坊主だから、何言わっでもごしゃがねがったと。ほだもんで、運林坊というのは、
「なえだ、お釈迦さま、俺ださばりそう言って、お釈迦さま鼻糞つけっだでさ」
 そんで自分で手をやってみたら、鼻糞が僅かに喰付いっだ。
「ははァ、なるほど、生ぎっだ人と死んだ人の違いざァ、これぐらいあるもんだ。生きった人はなんぼ立派な人でも、たまには落度というものはあるもんだ。んだけんども、落度が余計だればだらしないとか、馬鹿だとかという。俺はまだ生きったから、こうなんだ」
 それから、お釈迦さまの鼻糞という喩(た)言(とえ)ができたんだと。これは生きっだしるしだと。どーびんと。
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