12 春風吹けばタガ屋の繁盛

 春風吹けばタガ屋の繁盛ということは、ちょっと考えっど、春風が吹くとタガがゆるんでタガ屋が繁盛することだごで、と言えば簡単な語り方だ。そいつを廻りくどく語っど、春風吹けば、埃がとぶ。埃がとべば目に入る。目に入れば盲目(めっこ)も出れば座頭も出る。座頭が出れば、ボサマにもなんべげんど、女衆はゴゼになったもんだ。ゴゼになるには三味がいる。三味を作るには猫の皮がいる。ほんで、猫をぼつぼつと殺してしまう。猫がいないとネズミがうんとふえる。そしてネズミが桶のタガをガジガジと囓って、桶をぼっこすから、タガ屋が繁盛するのだ。廻りくどく語っと、こういう話だ、同じ話でも…。どーびんと。
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