8 沢庵漬

 沢庵和尚は大徳寺の住職であった。そして紫衣事件で配流され、上山に来ての話。
 上山に配流されて、そこらの檀中から大根や菜などいっぱい貰ったと。一人ばりなもんだから、段々菜っぱは枯れ、大根はしなびてとても食(か)れなくなったと。考えてみっど、とにかく和尚さまは穀や食いもの、人の手掛けて作ったもの、粗末にするということは一番の戒めになってるもんだから、なじょかして食いたいと思って考えた。
 そんで甕あったから、そのしなび大根を入っで塩かけて置いったと。そして一週間ばっかりもよってから、何も今日はお茶菓子ないから、人が来たので、そいつを切って出したと。そしたらば、すばらしい美味い味が出てやったと。
「和尚さま、京都からござったじだ、京都あたりでは、こういう漬物をするもんだか」
 と、聞かれた。
「京都では聞いたことない。こういう訳で、甕さ漬けたんだ」
 と言うと、
「んじゃ、なんという名前だべ」
 と聞いたところが、
「名前は、俺は知らねもんだ、ただこうして漬けたんだ。そうしたらこうなったので、名前は知らね」
 そしたらば、その人は、
「ほんじゃ、沢庵和尚さまが発明したんだから、これを沢庵漬と名付けたらええがんべ」
「ああ、それもよかろう」
 と言うて、沢庵和尚がつけたのが、沢庵漬の始まりであったと。どーびんと。
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