48 じじと火箱

 まいど、じじとばばいたったと。じじは年もとったもんだし、寒いのは、一番恐っかないこと、と火箱買って来て、毎日早く火取って、
「ばばよりめんごい、この火箱」
 なんて、撫でなで火取って、毎晩寝っと、
「ないだって、じじなんて年取ったのではァ、火箱ばり抱いてるもんだ。明日の晩げは火箱でないの抱くべ」
 なんて、ばば言うげんど、やっぱり、
「ばばよりめんごい、この火箱」
 なんて、毎日毎晩火箱とって寝っかったと。とばば怒って、この火箱さえないければ、じじは俺どこ抱いて寝んなだべ。と、この火箱憎らしいとじじがちょっと小便足れに行ったときに、寝床から火箱とって、
「この憎らしい火箱、池(たんなげ)さぶち込んでやる」
 と言うて、思い切ってぶち込んだと。やっととったばりの火なもんだから、
「じじ、じじ……」
 と、なんぼでも言うもんだと。
「この火箱、まだ、じ・じ・じ・じと言うてるもんだ。この腐れ火箱」
 なんて、こんど棒持って来て、火箱叩きしったと。そしたれば、ばば、滑って池さかっ転んで行って、ばばがらみ死んだと。
 んだから、そんげなものに悋気などするもんでないと。とーびんと。
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