40 恵比須講

 家の旦那と家のオツカと、嫁と、丁度十一月の恵比須講の日、
「今日は恵比須講なんだなァ」
 と言うたと。そしたらば、家の旦那は、
「エビス講ざァない、エベス講というもんだ」
 そしたらばダダ(オツカ)は、
「エベス講ざァあんまいちゃえ、おとっつぁま、あいつはキベス講というもんだ」
 と言う。そうしたば、嫁は、
「おら、おらえの実家では、あいつさドベス講とばり言うずなァ」
 エベス講、キベス講、ドベス講で大喧嘩始まったと。こがえ喧嘩ばりしったて仕様ないんだからなじょしたらええがんべと、旦那は考えたと。こいつ何とかうまくして買ってくれましょうと、
「んじゃれば、ここにはうんと物識りじんつぁいたから、そのじんつぁに明日来てもらって聞いてもらう。そんでエベス講だと言えば俺ァ勝ちなんだし、キベス講だと言えばお前(にしゃ)の勝ちなんだし、ドベス講なれば嫁の勝ちなんだし」
 と、そう決めたと。そうしたれば、一番早く行ったのは、家の旦那、そのじさまの所(とこ)さ行って、
「実は明日、こういう風にしてお願いしたい。俺はエベス講と言ったから、エベス講と決めておくやいな」
 と言って、お土産どっさりつき出したと。
「ほだほだ、エベス講どこでない」
 旦那はほくほく喜んで来たと。次にこっそり行ったのは、家のダッさ(オツカ)だったと。
「キベス講が本当だと言っておくやい」
「ほだどこでない」
 と、お土産どっさりもらったと。その次に行ったのは嫁で、
「こういう訳で、来たとこだ。明日ドベス講と言うておくやいな」
 またお土産どっさりもらった。そして次の日になってしまった。そしたらば、そのじんつぁ来て三人が三人で、俺ァ勝ちになると喜んでいたと。
 しばらく黙っていたところが、家の旦那は、
「エベス講、本当だべ、じじちゃ」
「ん、本当だ。お前の昔からあるのは、紙さ絵図みたいな判コ押したものだべァ」
「ほだ、そこさ貼ってた通りだ」
「んだれば、エベス講だ。本当だ」
 そしたれば、ダッさま、
「キベス講、本当な、んねが」
「ん、本当どこでない。お前の家にあんのは、木で彫ったお恵比須さまをあげて、そいつさ手合せているんだべ」
「ほだほだ」
「ほんじゃ、キベス講にきまっている」
 こんど嫁が言うには、
「ドベス講、本当だべ」
「ドベス講どこでない。そいつは、お前のは壁土をしめてこしゃったなだべァ、お恵比須さまに」
「ほだほだ」
「ほんじゃ、そいつはほだどこでない。エベス講も当り、キベス講も当り、ドベス講も当り、俺は大当りじだ。こりゃ」
 と言うたと。とーびんと。
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