32 木    魚

「木魚ざァ、なしてあんがえ丸こくなって、下の方に黒いようなで、口みたいなあるもんだべ」
 と、聞いたと。
 あいつァ、まいど、お釈迦さまざァいたった。その弟子に雲臨という、うんと体も弱い、頭病(や)みする小僧っ子いたったと。そんで、お釈迦さまはその小僧っ子をうんとめんごくて、めんごくて、いっかったと。ちょっと頭病(や)みなどすっどはァ、すぐにお釈迦さまの傍さ行って、
「頭病(や)めて、わかんない」
 お釈迦さまだって何にも仕様ないもんだから、頭ときどき叩いて呉(け)っかったと。そうすっど、その小僧は大変ええがって、あとスヤスヤと眠っかったと。そんでまた頭病みすっど、その手をまたやって呉(け)っかったと。そんでも体が弱いもんだから、若くて死んでしまったと。
「いや、こいつは雲臨のお供養でもする積りで、丁度あの頭の恰好に作って、毎日ポツポツと叩いて呉(け)っじゃれば、本当に極楽往生されんべ」
 と、思って叩いたのが始めだそうだ。それで面(つら)全体、漫画のように、口一つだけでなく、眼も耳も口も皆ついているのだと。下の方さあるの、まいど〈カミ〉と言うのは、髪のことだと。とーびんと。
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