21 旅僧とボタ餅

 旅の奴(やっこ)が来たったと。
 晩方になったから、泊めて貰いたくてお願いしたったと。ところがその家の奥さんが子供背負って、ボタ餅握りしったと。おぼこはヤンヤンと泣くもんだから、尻叩くその内、赤子(あかこ)はオシッコしてしまったと。そしてダラダラというところ、のんべ(しょっちゅう)叩いて握り握りしったと。それで、
「俺、今日は青茅(かや)の取初めで、ボタ餅作ってたところだから、ええどさござっておくやったから、お行さま、泊っておくやい」
 そんでもなかなかオシッコしったのを叩き叩きして握ったボタ餅食(か)せられっこんだら、困ったもんだと思って、隣の家さ行った。
「俺はこういう訳で…」
 と、ええくらい(誤魔化し)の会釈をして行ったと。そしたらば隣の家で、心よく、
「おら家さ、泊って行かれ」
 と、泊めらっだと。そして泊ったところ、ボタ餅食(か)せらっだ。食ってしまってから、
「お行さま、今日は青茅の取初めで、おら家では勘定悪かったので、ボタ餅さんねがった。そんで丁度前の家から、一(ひと)重箱もらったな、お行さまばり、腹くっちく食ってもらうように…」
 と、二杯も三杯も食(か)せらっだという。
 そして隣の家と言うと、やっぱり子供の尻叩いていた手で握った餅食せらっじゃという。んだから、当たる罰は菰かぶっても当るもんだと。始めに泊らっだとこさ泊ったって同じボタ餅食(か)んなねもんだから、先のに泊るもんだと。
>>とーびんと 工藤六兵衛翁昔話(一) 目次へ