12 狸の化物

 むかし、お稲荷さまあたりに、夜になっど年寄ばさまァ、糸車廻していっかったと。そしてローソク一本、ちゃんと点けていっかったと。
 そういう化物でるもんだから、組寄合して、狩人一人、組の中さいっかったので、聞いてみっど、
「ああいあ化物つうのは、灯(あか)しとか、化物の眼(まなぐ)が化物の正体なもんだから、そいつを狙って鉄砲ぶってやれば、一発でしとめられる」
 と狩人が言うたと。
 嘘だか本当だか知らねげんども、その狩人が頼まっで、一つ玉、うーんと大きいの拵えてもらって、出掛けて行ったと。
 お稲荷さまどこまで行くと、年寄ばさまァまた糸車ぐうぐうと、ローソク点けて廻しったと。狩人はそのローソクを狙って、鉄砲ぶってやったところが、一発でローソクは、パッと消えたと。
 次の朝げ、明るくなるのばっかり待ってて行ってみたれば、狸一匹だったと。その狸獲って来てみんなで狸汁して食ったと。
 ああいう化物はええもんだ。とーびんと。
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