11 オタタカ鳥

 むかし、あるとこさ二人の兄弟あったと。その兄の方が意地わるくて、舎弟の方は気持のええ人だったと。同じもの食せらっでも、兄の方は舎弟の方さだけ母がうまいもの食せてるのんねがと、言うこと為(な)すこと、舎弟の方ばっかりめんごがって、俺を虐待すると考えていたと。
 あるとき、兄が舎弟からニド薯(馬鈴薯)食せらっで、
「俺さ、こがえうまいもの食せだんだから、舎弟の方はなんぼうまいもの食ってるんだか」
 と、舎弟の腹切ってみたと。そしたら、舎弟の腹からはニド薯の皮ばっかり出てきたと。はじめて、兄は悪かったと思って、一日に八千八声、
〝弟恋し 弟恋し オタタカ鳥〟
 と鳴かんなねくなったのが、オタタカ鳥だったと。とーびんと。
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