2 雀コむかし

 雀一匹いたったと。丁度庭の桑の木の洞(ほら)さ雀は巣を作ったと。そして毎日一粒ずつ産(な)して七粒たまったと。今度は産し方やめて、温めて孵(むや)さんなねとしていたと。そしたば猿が来て、卵見て食(く)たいもんだから、
「雀々、卵一つ、そんがえ一杯あるもの、呉(け)ろ」
「こいつァ、俺の子どもだもの、子孫繁栄のために、大事に育てんなねと思っていたもんだもの、呉(け)らんね」
 と言うたと。
「呉(く)れなどしないごんだら、そっげなもの、後の一粒呉れたって、六粒残る。七粒共、貴様どもに巣がらみ皆ぼっこして(壊して)くれる」
 と、桑の木をぐらぐらゆすったと。そうすっど巣までぼっこされるもんだから、仕様なくて雀は、
「ほんでは、一つだけ呉れっから、後は決して呉(け)らんねぞ」
 と言うたと。そして猿は貰ったから、トットッと行って、途中でつぶして卵吸ってしまったと。そしてまた戻って来て、あの野郎まだ六粒持ったもの、もっと貰って呉(け)んなねと思って、また、
「雀々」と来た。
「いや、俺はとんでもない惜(いたま)しいことした」
「何したこと?」と雀。
「あそこの川跳ねるべとて、思い切って跳ねて見たらば、跳ねた拍子に、俺ァ懐さ入れてた卵、皆ひっつぶっでしまった。ほだから、なじょかしてもう一粒俺さ呉(け)ろ」
「いや、そがえに呉(け)らんねはァ」
「呉(け)らんねなんて言うごんだら、また木ゆすって皆ぼっこして呉れる」
 巣ぼっこされては、ありだけ(全部)無くなるんだし、こんじゃ、
「いま一粒呉(け)っから、決して後は呉れらんねぞ」
 と言うた。そしてそいつを貰って行ったと。またそいつを潰して飲んでしまって、
「いや、雀々、何べんも俺も恥(しょう)かしいげんど、その川また跳ねんべと思ったば、思い切って転んで皆ひっ潰っでしまった」
 と言うと、
「ほだから、俺どさ、いま一粒呉れたってまだ五粒残るもんだもの、あんだ、呉(け)ろ」
 いや呉らんね、いや呉ろと言う。
「ほんじゃらば、はっけなもの(そんなもの)、桑の木なの折(おだ)れるほど、俺はゆすって呉れる」
 と言うた。そうすっど仕方ないから、また一粒呉れた。その手でありだけ貰ってしまったと。そして雀泣いっだどさ来たのは、亀蜂・蛙・牛のビタ糞・栗・臼などだった。
「何しった?」
「こういうわけで、卵皆取らってはァ、何とも子供も何も持ちようなくなった」
 と言うた。
「よし、あっけなもの、俺は貴様ら見っだ前でやっつけて呉れっから、ほがえ泣くな」
「おらだと一緒に追掛けて、あんだもそっと行ってみろ」
 猿の家まで行ったと。そしてその時、まだ猿は夜上りしなかったものだから、栗は囲炉裡の中の火燠(ほど)あるどこさ隠っでいたと。亀蜂は流しの味噌甕の中さ入ったと。それから蟹は水舟さかがんでいた。そしたら猿は、
「いやいや、腹はパンパンだ。こりゃ、雀の卵七粒食ったもんだから、いや腹くっちい」
 火を掘(ほげ)って、どんどん焚いて腹あぶりしったと。そしたらば、栗がバーンと跳ねてしまったと。腹さな。いや、熱くて仕方ない。流しの水舟さ行って冷(ひや)すべとしたらば、腹のとこ蟹のこんがえ大きな鋏でバッキリ嵌まったと。
「いや、こんじゃ痛くて困る」
 と思って、甕さ行ったところァ、亀蜂にチクリと刺っでしまったと。
「いや、こんじゃ何処さ行っても、家の中に居らんね」
 と思って、戸の口に出はった時に、牛のビタ糞さ、ツルンとすべって戸の口さ、仰向きに倒っだと。その上さ、軒の上さあがっていた臼はゴロゴロ落ちて来て、猿の腹さビダーッと落ちて殺さったと。んだから弱い者いじめらんねけど。すぐに仇ざァとられるもんだと。
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