24 円山応挙の猪

 むかしむかし、円山応挙ていうすばらしい上手な絵描きの人いだんだけど。
 ところがその円山応挙という人が猪描いたことない。何とか猪描いてみたいと思って、百姓さ頼んでいたれば、ある朝教えて来た。
「先生、先生、猪いたからそっと行って描くとええ」
 ほして喜んで行って、まず今の言うデッサンした。ほしてさっさっ、さっさっとスケッチでとって、家さきて描いてみた。われながらええ塩梅出たと思っておいっだれば、狩人のひと遊びにきて、
「なして、先生、死んだ猪描いたんだ」
 て聞がっだ。
「死んだ猪なて、おれ描いっだ時、生きっだ」
「また、先生、ほだごど、ねっちょ張ったって分んねっだな、おらだ商売だも」
「商売だて、実はな、このホッていう息見て描いてきたんだから」
「いや、先生、生きっだ猪はこういう格好にならね、死ぬときばりだ、こういう格好するな」
 論判になった。
「んだらば行ってみんべ」
 こういうわけで、ほの百姓と円山応挙先生は行ったれば、やっぱり猪、手傷負って死んでいだっけ。んだから狩人の言うこともやっぱり長年の経験で、どういう風な格好しったときは、この熊はかかるんだ、あるいはこの兎は走るんだ、このキジは飛ぶんだということを十分狩人は心得っだもんだけど。んだからその道その道にかけては狩人と言えども、馬鹿にさんねて言うたもんだけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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