20 納豆の由来(1)

 むかしむかし、春先、味噌煮っどて、臼さ味噌煮豆入っで、臼で搗いたやつをハギリで、塩・糀入っで、豆五合・糀五合・塩五合で、五合(ごごう)混ぜした。ところが搗くべと思ったところが、用ある人ござったりして、ほしてさめっどなんていうわけで、蓆かけて、その上さ藁かけておいた。ところがその用が終んねくて長く続いたもんだから、次の日になってしまった。
 搗くべと思ったら何とズルズル、ズルズル糸出てしまった。搗ける状態でなかった。指でとってそっと食ってみたれば、匂いも悪くないし、何とこれは食んねどころか、腐っだんでなくて、うまいものになっていた。
「何とうまいものになっていた。何とうまいもんだ」というわけで、「なんと」て言うたげんど、だんだん「納豆」になったど。どんぴんからりん、すっからりん。
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