17 金の斧と銀の斧

 むかしとんとんあったずま。
 あるところにじんつぁとばんちゃいだけずま。じんつぁ山さ行って、毎日木伐り、ばんちゃは家守って細々と暮しったけど。ほしてあるとき、沼のほとりで、じんつぁ斧研いでだれば、ツルッと手ひっぱずして、斧中さ入って行ってしまった。
「はてさて、困ったことになったもんだ。斧ないげば、おれ、明日から暮さんね。 何とかなんねべか」
 と、いろいろ手でさぐったり、何かえして見ても分らね。ほうしたれば、何だかおかしげな人現わっだけぁ、
「かいつ、お前な、んねが」
 て、斧持ってきた。はいつ見っだけぁ、じんつぁ、
「こだな立派な斧でない、おれのは何十年も使ったんだから、よくよく減った斧だ」
「ほうか」
 て、そいつはスウーッと消えたけぁ、また別な斧持ってきた。
「ほんでは、こいつだか」
 見たれば、ほいつぁ金の斧だった。
「いやいや、金の斧でない、おれぁ貧乏してだんだから、鉄の斧の、よくよく擦り減ったなだ」
 て言うたれば、
「いやいや、実はな、おれはここの水神さまだ。お前が正直なために、おれは、この金の斧、お前さ授けてやっから、こいつ持って行って、こいつ売って、木こりなどすねで、ゆうゆうとばんちゃと暮したいから、こいつ持って行って暮せはぁ」
 て言うて、水神さまから、その金の斧もらったげど。んだから正直してっど、ええごどあるもんだて、むかしから言うたもんだど。どんぴんからりん、すっからりん。
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