13 貧乏神

 むかしとんとんあったずま。
 あるところに、じんつぁとばんちゃいだけずま。ところがこのじんつぁとばんちゃ、なんぼ稼いでも稼いでも、うまくなくばり行って、逆手逆手とばり行って、銭残らね。
「不思議なこともあるもんだな。じんつぁ、じんつぁ、こだえ銭残らねごんでは、何とも仕様ない。ほがらかに、二人一生送んべはぁ。まさか飲まず食わずで、作さえ、ええあんばいだど、食って飲んで生きられんべから」
 て言うわけで、
「ほだほだ、ばんちゃ、ほうしてはぁ、のんきに暮すべなぁ。今からそう長生きもするわけでないしはぁ、ええがんべ、ええがんべ」
 ほして、ある年とりの晩、ぱんぱんと手(はた)いてお詣りした。そしていつでも神さまさ、正月ていうど、酒と餅と納豆上げるんだけど。ほんで年とりの晩、はいつの準備しったわけだ。ほして歳徳神さまさお神酒いっぱい上げて、お祈りしたれば何だかおかしげなものドサッと落っできた。何だべと思って、何落っで来たべと思ったれば、その落っできたものは物語りはじめた。
「じんつぁ、ばんちゃ、実はお宅さ、とり憑いっだおれは貧乏神だった。おれ、いたからお前の家では、なんぼ稼いだて銭もたまらねがったし、事業はうまく行かねなだった。んだげんども、おれはお宅さとり憑いっだげんども、お二人ぐらい、まずほがらかで、ほして、あだいひどい目に合っても決していじけないで、ほがらかに暮している人さ、とってもはぁ、憑き飽きたから、今日限り福の神と交代すっから、よろしく福の神ばお願いしますはぁ」
 て言うけぁ、そのドサッと落ちたもの、なくなってしまったんだど。ほうしたけぁ、福の神さま、今度ぁ来たわけだど。ほしてじんつぁとばんちゃ、
「福の神さま、福の神さま、なにまず、おらえの家さ来てけだった。なぜすっど銭は溜るもんだ」
 開口一番聞いてみたんだど。したば、
「いやいや、何もほだなこと聞くことない。今まで通りでええなだ。家内和合、夫婦和合くらいええ金貯めないなだ。こいつぁ千両箱、二千両箱にもまさるもんだ。こんどは貧乏の神さ代わって、おれぁ、お前の家さ来たから、まあ、心配ない。今まで通りの気持忘せねで、おつかえしていただきたい」
「いやいや、どうもどうも、まず」
 て言うわけで納豆と餅とお神酒と上げてお詣りした。それからそこの家ぁ、やることなすことみな順調で、ほして、
「さぁ、福の神さま、今日は今日で、ええがったす。さぁ福の神さま、何の方ええがった」
 て、ええことずくめだど。んだから、たとえ少々貧乏しても決していじけねで人さ迷惑かけねで、ほがらかに家内中明るく仲よく暮すことが、本当の千両箱だし、福の神だて言うこと悟ったんだけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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