8 左甚五郎のねむり猫

 むかしとんとんあったずま。
 宇都宮さ東照宮というお寺建てて、そしてそこの奥の院さ権現さまと称して、徳川家康のお墓建てて、安らかにそこさ眠らせると、こういうわけで陽明門さ鳴竜の間、いろいろなすばらしい建築がなされた。ほして将軍家の計画で、そこから奥にはねずみ一匹通さないと、こういう風にするためには何故したらええがんべ、んでは今をときめく左甚五郎にお願いしたらええがんべ。こういうわけで左甚五郎が頼まっだ。
 そして左甚五郎がそのねむり猫を彫った。何だかちょぇっと見っどつまらねようだげんとも、いざ欄間のどこさ上げてみたれば、本当のねむり猫だ。生きっだ猫と同じだった。今にも牙むき出して、ねずみさとびかかるような、何ともものすごい猫が彫り上げらっで、ほしてそこさおさめらっでがら、そっから先さは、ねずみ一匹行がねがった。ほして、ますます左甚五郎の作ていうのは、天下さ名声を博したんだど。どんぴんからりん、すっからりん。
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