32 佐兵ばなし― 砂糖なめ―

 安達屋ていう魚屋、高畠にあんべ。佐兵、そこさ行って、
「砂糖、なんぼで売っておぐやる」
 ていうたば、
「なんぼ買われっこんだ」
 ていう。
「おれ、この一樽、みな舐 (な) められんな」
「みな舐められるて、舐められんめぇちゃえ、そのようにいっぱいある砂糖、舐 めらんねぇごで」
 ていうたば、
「いや、舐めらんねぇざぁない。みな舐められる。こだなもの」
 すっど、こんど、安達屋の旦那、
「ほげなもの舐められっこんだら、我慢して舐めてみろ、舐めたら、みな呉れっ から」
 ていうたもんだから、一生けんめいその日は舐めて、舐めほうず(放題)舐め で、あと舐めらんねぐなったもんだから、
「明日来て、また舐めっかなぁ」
 て行ったど。そうして毎日砂糖なめに来らっじぇ、一樽みな舐めらっじゃとい う話だったど。
(佐沢口・佐藤継雄)
>>高畠町和田の昔話 目次へ