29 佐兵ばなし― 田の草とり―

 田植のときもその通り、田植してで、久さんという人と田植すっど、自分の方 ばりヨコ・タテ十文字で、田植上手で、縄などいっこう張んねで、ずうっと植え られっかった。そして、二人で田植して、
「久さん、久さん、おら家さ来て、田の草とり、助 (す) けで呉ねが」
 て、行ったらば、
「田の草など、おれ下手だから、しね」
 て、久さんがいたらば、
「下手だて、かまねがら、来て、助 (す) けろ」
 ていうたら、
「ほんじゃ、お前先に来て助けろ」
 ていうたもんだから、こんど、佐兵が先に久さんどさ行ってよ、
「久兄 (あん) にゃ、ほんじゃ、田の草とりすんべ。手伝いに来たがら」
 て、根っこ、いやというほど、佐兵は掘って呉だ。
「ほだに、根っこ掘ったらば、みなわかんねぐなっこで、稲。ほだに根っこ掘ん ねでけろ」
 ていうたば、
「こいつ、いっぱい掘んねど、わがんねもんだ」
 ていうて、ぼんぼんと掘ってくっじゃ。ほうしたば、かえって稲、すばらしく ええぐなったど。
 ほうすっど、反対に、自分の家さ、酔えだどきに来て、豆畑のキッカケに、
「ようし、この前の時にさっじゃがら」
 て、久兄にゃが豆の根っこを、いやというほど掘ったら、豆、みな枯れだじも の。久兄にゃにやらっだど。
(佐沢口・佐藤継雄)
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