23 南の山の馬鹿聟― 馬の尻に札―

 南の山の馬鹿聟ぁ、おじのどさ、
「用足しに行ってこい」
 て言 (や) っで、そして、
「新築したばりだから、行ったら賞めてこい」
「何て、賞めだらええなだ」
 ほして、
「たしか、家建てたぐらいだから、新しいお仏さま買ったべがら、新しいお仏さ ま買ったらば、見て、どこかに穴ぽこあっどきにゃ、〈ええ仏さまだげども、この 穴さえもないど〉ていうたら、〈おんつぁん、おんつぁん、ここさ掛図でも掛げっ どええ〉て、賞めろ」
 そのとおりに行ったど。したら、なるほどあったけどら、穴がよ。
「おんつぁん、おんつぁん、もったいないどこに孔あっから、掛図、ここさ掛け たら…」
「なるほど、にさ、馬鹿だと思ってだら、馬鹿でない」
 て、おんつぁんに賞めらっじゃど。ほしたら、ずうっと厩の方さ廻ったれば、 一生けんめい見っだつけどら、どこかに穴あっかと思って見っだら、どこにも穴 ないがったど。ほして馬の尻見だらば、そこに穴あったて。
「おんつぁん、ここの馬の尻さも掛図かけっどええ」
 ていうたど。
(佐沢・山田喜一)
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