22 南の山の馬鹿聟― 蟹のふんどし―

 馬鹿聟は嫁もらって、嫁の家さはじめて行った、三ツ目だかの日に、
「にさ、海岸ばたの嫁の家さ行ぐとき、何 (なえ) て彼 (か) えて、蟹ぁ出っから、蟹ざぁな、 ふんどし取ってから食 (か) なねぇぞ」
 て教えらっだ。
「ふんどし取るくらい知ってる、やい」
 て、行ったずけどれ。
 案の定、行くと、蟹出て、仲人も行ったがら、モソモソ、モソモソて、馬鹿聟ぁ 腹のどこさ手やってっから、何しったと思ったら、真黒いふんどし、ずるずる引 張って、傍さ置いて、蟹、ガモガモと噛っていたど。
 蟹のふんどし取って食うな、自分のふんどし取って、蟹食ったてよ。
(佐沢・山田喜一)
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