18 屁たれおひつ

 おひつぁ、嫁に行ってよ、青い、赤味のない顔してんなだど。
「おひつ、どこか悪くないが」
「おなら出たくてよ」
 ていうんだど。
「そげな、おなら、堪 (こだ) えでいっことない。自分が出るだけ、したらええがんべ」
「おれは、ちょっこら、軽くないおならだから、炉椽おさえでで」
 て、やった。
 そうすっど、親たちも魂消たごんだど。そうして、やっぱりおならしたもんだ ずも。そうしたら、そこのお姑さま、火棚さとんでしまったごんだど。そうすっ ど、
「こんな嫁、一日も置かんね」
 そしてはぁ、追 (ぼ) い出さっだじゅうもんだ。そうすっどこんど、
「仕方ない。自分がおならして、寄 (よ) 越 (こ) さっじゃんだから」
 て、とぼとぼ帰ったんだど。
 そしたら、子どもら三人ばり、梨のもぎ方しったんだどな。ほうして、小さい 竿で、もがんなくてよ、いだ時、
「おれ、屁でもいで呉 (け) っかな」
 どかて言うたそうだ。
「嘘ばり語って、屁でなのもがんねごで」
 そうすっど、やっぱり、おひつ、屁でもいで呉 (け) っじゃそうだ。そうして今度、 そいつ有りだけ持って行げなんて言 (や) っじぇ、持って行ったら、また途中で、船が 動がんねでいたな、そいつば、また屁で動かして呉っじゃんだど。そうしてすば らしくいろいろなもの、もらったど。
 どーびんさんすけ、さるまなぐ、さるのまなぐさ毛が入った。けんけん毛ぬき で抜いだれば、まんまん真赤な血ができた。どーびん。
(前田・安部その)
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