29 豆腐とこんにゃく

 むかしむかし、あるところに、豆腐とこんにゃく居だけど。ほして豆腐はザルさ入れで買わっで行って、ほこの女中さんが、手ぱずして落した。豆腐は、まず見たどこはほだんでないげんども、中はザクザクになってしまった。
「いやいや、痛い痛いちゃ、こら困ったもんだ。ほさ行ぐど、こんにゃくさんなのええっだなね、なんぼ()ぢ投げらっだって、まず怪我したなんて、痛くしたどこなんてなくて、ええっだ。まず、おれぁこりゃ、やっこいばっかりで、つうとほっちゃぶっつかり、こっちゃぶっつかりすっどはぁ、元の豆にならんねっだ、こりゃまず困ったもんだ」
 て言うわけで、
「こんにゃくさん、こんにゃくさん、お前はうらやましいなぁ、まずお前みたいな体に、おれぁ一度なってみたいげんど」
 て言うたんだど。ほしたれば、こんにゃくさんは、
「いやいや、豆腐さん、お前の方は、おれより仕合わせだかすんない」
「なしてやっす」
「おれざぁなぁ、いつでも呼ばられっ時は、今夜食う、今夜食うて、今にも食れるようなことばり()っで、ざわざわてばりいんなねず」
 て言うたけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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