シラバス

くらしと日本文学

開講年次：1年次

卒業：選択

開講時期：後期　授業形態：講義　授業回数：15 回　時間数：30 時間　単位：2 単位

熊　谷　義　隆

■ 科目のねらい
　古典文学の学修を通し、社会の出来事に幅広く関心を持ち、理解する人文・社会科学的な分野の基礎的能力を身につけることを目的として設置している。

■ 授業の概要
　古典文学を素材に、日本文化の特質と、子どもの形象を通して作品を理解していきます。まず、日本の文化を外国文化の受容とそこから生まれる独自性という視点から、全体的に捉えることも目指したいと思います。そして、子どもの形象を通して作品を捉えます。日本の古典文学で子供がどのように描かれてきたか、子供を描くことが作品の中でどのような意味を持っていたかを考察します。取り上げる作品は、上代から近世までの主要な作品です。これを通して、日本文化の中で子供の持つ意味の多様性を学ぶとともに、日本の古典文化と文学史の基礎知識を得ることも目指します。

■ 達成目標・到達目標
①アジア、特に中国からの文化や制度の受容と独自化を説明し、現代との違いと共通性の課題を立てることができる。
②作品の中で、子供の形象がどのような意味を持っていたかを理解し、現代との違いや共通性を考え、説明することができる。
③取り上げる主要な作品の内容について説明することができる。
④古文や古典の基礎を身につけ、説明することができる。

■ 単位認定の要件
少なくとも、②の達成目標まで到達すること。

■ 単位の認定方法及び割合
期末レポート：60％　授業内提出物：20％　授業内活動：20％

■ 授業計画

第1回ガイダンス

子供と古典文学を取り上げる意味と方法論を講義する。古典についてのこれまでの学習や認識を基に、ディスカッションを行う。

第2回外国文化の受容と日本文化

日本文化の独自性が、外国文化の受容を行いつつ形成されてきたことを、文字・思想・社会制度などの面から考察する。

第3回子どもの身近にある古典

海幸山幸や浦島太郎など子どもが接する昔話には、古事記記載の神話や古典作品を素材としたものが多い。
それを紹介し、その意味を考察する。これまでの認識と新たな発見について、ディスカッションを行う。

第4回万葉集概説

万葉集の構成と成立、そして主要な歌人と時期区分を講義する。

第5回柿本人麻呂の描く子供

泣血哀慟歌など人麻呂の私的な歌を取り上げ、古代における家族と子供について講義する。子どもの生命力に関するディスカッションを行う。

第6回山上憶良の描く子供

儒教や仏教を体得した山上憶良の家族と子供への認識について講義する。「愛」について、これまでの認識と描かれている内容を踏まえたディスカッションを行う。

第7回防人歌の親子

東国から九州に派遣された防人の歌を取り上げ、極限下での親子について講義する。

第8回土佐日記の亡児哀傷

任国土佐から帰京するまでを描きながら、土佐で亡くした子供への思いを描くことの意味を講義する。これまでの認識と描かれている内容を踏まえたディスカッションを行う。

第9回蜻蛉日記の親子

一夫多妻であった平安時代の女性の思いを述べた作品を通して、家族のあり方を考える。「家族」や「結婚」について、描かれた内容を踏まえたディスカッションを行う。

第10回源氏物語の親子１

源氏物語の長編構造が、三代にわたる親子の継承の物語であるのを講義する。これまでの認識と描かれている内容を踏まえたディスカッションを行う。

第11回源氏物語の親子２

親から切り離され、子供がいない紫の上を女性主人公にしている意味を講義する。これまでの認識と描かれている内容を踏まえたディスカッションを行う。

第12回源氏物語の親子３

密通によって生まれた不義の子、薫を宇治十帖の主人公にしている意味を講義する。これまでの認識と描かれている内容を踏まえたディスカッションを行う。

第13回枕草子に描かれた子供

枕草子に描かれた多様な子供の姿を通して、この作品の持つ多様性について講義する。これまでの認識と描かれている内容を踏まえたディスカッションを行う。

第14回平家物語に描かれた子供

戦乱の世の中で子供が持つ意味、そして宗教的救済と世俗の愛情との葛藤について講義する。これまでの認識と描かれている内容を踏まえたディスカッションを行う。

第15回徒然草に描かれた子供

無常観の文学といわれながら、一方で矛盾したあり方を示す徒然草の特質を子供の形象を通して講義する。これまでの認識と描かれている内容を踏まえたディスカッションを行う。

■ 時間外学修
各回の授業の最後に、その授業の理解を深めるための課題と、次回の準備として調べる事柄を指示します。
（毎回約4時間）

■ 課題に対するフィードバック
学生の発表についてはコメントを加え、レポートについては簡単な添削を行います。

■ 使用テキスト・教材
プリントを使用。

■ 参考文献等
熊谷義隆『源氏物語　二つのゆかり』（２００８.神典社新書）

■ 備考
古典文法が苦手という学生にも、分かりやすく説明します。

2019年度 シラバス 人間科学部 子ども教育学科

2019年度　シラバス　　人間科学部　子ども教育学科