16 金が蛙になった話

 貯めるばり面白くて、おかたの頭さも油つけらせねで、働いては貯めしている男がいて、ある時甕いっぱい金貯めったから、その金を人に見つけらんねように貯めて、
「人に見つけらっだ時には、蛙にでもなって見せろよ」
 ということを、金さ語って、埋めてその上さモク掛けて、また毎日毎日、働いていろいろなもの売って来ては、金貯めてる男いだったど。おかたに着物買って呉(け)ることも知(し)しゃね、頭さ油つけらせることも知しゃね、ただ貯めて置くばりなもんだから、ある時、山さ働きに行った ときに、いっぱい蛙をとって来て、おかたはその金の代りに、いっぱい蛙をつめておいたど。そしてじいさんとこさ、
「おれぁ、町さ行ったとき、とうし、金を出さねど、世の中見たくて蛙になったり、いろいろになるという話聞いて来た。おれの旦那さまは、そげなことしてえんまい」
 なんていうような、オドケ話語ったところが、
「ああ、おれのも、そげなことなっているんであんまいな」
 と思って掘ってみたら、やっぱし蛙になって、ピンピンピンピン。
「いや、おれだから、蛙になんなよ、おれだから蛙になんなよ」
 というたげんど、ピンピンピンピンとみな跳ねて行かったど。
「いや、本当に変だ。おかたのことも信じなくてはなんね」
 そしたところが、そういうことになったという話。んだから貯めるもええげんど、世の中さ金というものは出はって、使ってもらったりいろいろすっじど、喜んで蛙になんねげども、土の中にばりいたくないから、そういう風になったから、楽しみも金だし、喜ばせるも金だから、金を使ったって、金は使っただけ入って来るもんだって。そうおかたに教えらっじゃど。そしてそういう風に使ってみっど、そのおかたは使っただけ、銭をポロリポロリと入れて呉っじゃど。その人も喜ぶという、金も使えば使うほど貯るもんだという、真人間になって楽しんだという。銭は使わないで貯めるばり能でな いという話。

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