13 かわうそと熊

 ある山の一軒屋に、山の川を利用して、粉屋一軒あったて。その粉屋の御主人が、立派な人好しだほでに、うんと流行(はや)って、うんと人を使って働いたど。そこさ、あるとき、変なものがチャンと顔面(つら)出して見てるものいたど。カオスだって。
「いやいや、カオス、とんだもんだ」
 それ見ないふりして、まず川を利用して粉はたきしていたのだから、カオスさ何か言ったり、またいたずらをすっど、なじょな目に合うかわかんねからと、見ね振りして毎日毎日それええ調子にして、見に来るど。あげくには、トコトコと入って来て、火なのあっどさ来て、当ってなのいるど。そうすっど、みんなは何としたらええんだかと言うげんども、その粉さ、いたずらされだり、いろいろしても困ったんだし、またこの川を利用しったのなんだし、すっじどと思って、まず知らねふりしてれば、知(し)しゃねふりしてるほど、あっちは増長して、飯食うとこさまで来るように、ダラダラという形姿(なり)して、形姿(なり)なの干している。そして皆は嫌(や)んだくて、使っていた者は皆帰る帰ると、帰って行がっで、ある時、おかたまでもいらんねと思って、荷一背負い背負って、帰らっじゃもんだど。何とも仕様ない。そうすっど、こんどは誰もいない調子ええと、魚なの採ってきて、焙っていたのをパリパリと食ってるようになっていたど。
 それから、困ったなぁ困ったなぁと思っているうちに、ある夕方、一人の男が、
「どうか、おれどこ泊めて呉(く)ろ、おれぁこの熊を芸させてもらっている男だ。ここ通ったから泊めて呉(く)ろ」
「泊めらんね」
 というたの、
「なして泊めらんね」
 というたらば、
「こういう魔物というんだか、何というんだか、とにかく泊って、お前だに魂消らせるようなことあっては困っから、何とも仕様なくて、おれぁ見ねふりしているど、なんぼも増長して、こういう者、家まで来て、雑魚焙りなどして食っていっこんだ」
「それは珍らしいごんだ。なじょなだ。おれはそんげなこと見ったいもんだから、泊めて呉(く)ろ」
 と。
「そんじゃ、そういうことでええごんだら、泊まれ」
 と、泊ったところが、朝げに火焚いたところが四五匹の魚持(たが)って来て、焙り方して、焙ったの、うまいとていた。そうしたところが、熊はその岸の方に寝ったっけぁ、行ってまず、そのカオスの頭くらすけだ(殴る)ど。こんどはあっちでもくらつけだり、くらつけらっだりしったけど。とうとう熊に負けてはぁ、魚とらっで逃げて行ったど。そしてこんど、その次の日は飯食って、熊とその人は帰って行ったど。そしたばカオスはまた来て、
「じいさん、ひどい猫は来たもんだな。おれは魚はみな食う。おれどこ、まず叩いたりして困った者来たっけなぁ」
と、こういうことだけど。
「あれは、ここさ住むというて来たなだ。なんぼ子どもつれて来っか、ここはあれに占領されっどこだはぁ」
 というたば、「はぁ」と聞いっだけぁ、
「さようならすんなねはぁ、こりゃ、じいさん」
 と、それから来なくなって、とうとう熊に負けてしまったど。
 こんどはみんな喜んで、また繁盛したど。熊に助けらっだ話。

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