6 三人兄弟

 むかし、王様、三人子ども残さっで、男子(おとここ)。おかたに早く別っだど。こんで、王様は三人の子どもも一人前になったし、嫁もとって呉れなくてはなんねから、と思って、三人の子どもを呼ばって、
「お前のおっかさは仲々しっかり者で、手の先も器用だったし、おれの片腕にもなって、欠点のないものざぁないげんども、ええなだった。んだから妻というものは、ええ妻を持たなくてはなんねぇから、一番とええ妻を持ったのを後継ぎにすっから、妻をえらんで来い」
 と。ところが、一番兄は気むずかしいような、二番目はハイカラな気持、三番目は大人しくて、人と応対するも嫌いなもんだったど。その二人の兄と次の兄は、
「おかたえらぶごんだら、なんぼも町さ行って、そうしてなんぼもええ ..女もいる。あれをおれぁ目つけっだ」
 なんて、喜んでいたっけ。
「んじゃまず、青芋一把やって、これを三日うちに績(う)んで来る者を、どれええあんばいに三人のうちに績(う)んで来っか、これ持(たが)って行って績(う)ませろ」
 と。そうしたところが、一番末子(ばっし)は、どこさも行ったことないんだし、これは、
「おれぁ、そがな人見たことない」
 なんていうても、兄弟さだても恥入るごんだし、と思って馬さのって、まず行ったば馬は山さ登った。馬の足の向き次第で山さ行ったずうもんだ。
 あとの二人は町さ降って、自分の気に入ったおかたさ持って行ったし、みな喜んで王様の嫁になられるというもんで、
「ほんじゃ、おれぁ績(う)むから…」
 なんて、二人の兄どもらの女衆。末子は、
「なんとしたらええんだか」
 と、馬の足の向き次第、山さ行ったところぁ、むかし城でもあったかと思うところで、馬は休んだど。そこさ降ちてみたらば、大きな石のあるところさ腰かけて、
「なんと、こがえなところに何もいないんだし、どうしたらええがんべな」
 と、一人口たっていたらば、ネズミは石の上さあがったど。
「何を語っている」
 と、ネズミの話。
「おれは、こういう風にして、兄弟衆三人がいたげんど、おれはどさも行くよう知らねんだし、なんとしたらええか、まず兄弟にだって見放されんだしと思って心配して、ここにいたどこだ」
 といったところが、ネズミは、
「そういうことだれば、おれぁ手助けすっから」
「その三日のうちに績ませて、上手に績んだのを後継ぎにさせるといわっじゃ」
 というたば、
「んだば、その糸を置いて行け」
 と、こうネズミはいうたど。それから今度は喜んで、三日目に行ったところが、
「この箱、持って行って呉(く)ろ、箱の中さ青芋撚ったの入れた。まず家さ行かねうちは開けないで呉(く)ろ」
 といわっだど。
 一番大きな兄と、中の兄が持って来て、親さ見せたところぁ、
「これは、まず、雑魚とり網にもわかんねような編み方だ。こげなもの…」
 と、二人の兄どもら言わっでいだっけど。そして三番目が箱突出 つ だ したところぁ、
「これはまず綺麗に上手に績 う む者もいたじだな」
 といわっだど。
「んじゃ、これでうちの母はみな機を織って着物拵えて、器用なお母さんだった。それくらいなことさんねの、分んねから…」
 というもんで、一週間うちに機織って来いと言わっだから、兄たちは、
「これで機織れ」
 と、ええどこの娘なの、学問なのあっけんども、そげなことしたことない。んだげんども、王様さ嫁(ゆ)きたいために、何でもかんでも、編みつけだと。こんどはまた末子はそれを持(たが)って、
「ネズミよ、ネズミよ」
 と呼ばったところが、出はって来て、
「これ、一週間うち、機織れといわっじゃ」
「ほんじゃ、なんでもかんでも織ってやる」
 と、こんど一週間もよってから、また元通りの箱さ入っで持って来た。
「兄どもらの機は役立たない。そしたば一番末子のは本当にきれいだ」
 と賞めらっじゃど。そしておかたが王様さ見合いとなったど。そうしたところぁ、何とも仕様なくて、
「ネズミ、こういうわけだ。ネズミよネズミ」
 と呼ばって話をしたら、
「おれは、実は隣の王さまさ嫁入りしろと言わっじゃげんど、よくよく嫌(や)んだくて、聞かないで、魔法に掛けらっで、こういう風になっているんだ。その魔法に掛けらっじゃの、みんな笑うようなことになれば、魔法を解くと言わっじゃげんど、なじょな方法ええかと、おれは考えていたとこだ」
 というどこだど。
「ほんじゃら…」
 というて行ったら、鳥屋に行き会ったど。鳥屋も親切な鳥屋で、
「オンドリを、どうかおれどさ売って呉(く)ろ」
 というど、オンドリさ何かお花など飾って、ネズミがそれにのって、魔法掛けらっじゃ家さ行ったところが、
「いや、珍らしいものは来た」
 というもんで、掃除してた下女どもら、家さも寄んねで、
「ああ、珍しいもの来た」
と、アハハ・アハハといたど。そしたら、魔法かけたおばぁさんが出はって来て、
「何をいうてる」
「珍しいもの、まずオンドリの珍しい様子して来たごど。そいつさネズミなののって、踊りなのおどっている」
 というもんで、うんと笑っていたっけど。そしたところぁ、魔法かけたばぁさんも、
「おお、珍らしい、あらら…」
 というもんで、大笑いしたど。
「こういう風だ」
 と、ネズミがいうたところぁ、
「魔法を、おれぁ解く、お前は親のことも聞かないで、王様さ(嫁に)行かないので、こういう風になった。ほんじゃらばその王様さ行くように魔法解いて呉れっから」
 と、とてもええ、元通りになったど。そして今度はその王様さ行って、見合いということになったど。ところが、
「ネズミは何として来るもんだか」
 と思って心配しったところが、一番もんだったど。それを貰ったど。
 んだから、おかたのええのもらわねど、駄目だど。

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