30 ドンドンビキ

 楢下の宿場の町尻の方に、今でも、ドンドンビキ(ドンドンヒビキ)という地名があって、普通、あるいてあるくと、ドンドンて、底深い音がする。
 これは、昔、八百年ぐらい前に、八幡太郎義家が東北攻めにきた。安倍貞任・宗任の兄弟は磐上山二つ森に布陣した。そして八幡太郎義家が攻めて来たのが分 るように、大きい太鼓をあそこに()けた。八幡太郎義家の軍勢がそこ通って来っど、ドンドンと音すっど、
「ああ、いよいよもって来たぞ」
 て、戦闘準備するのに、あそこさ太鼓埋けたんだどて、楢下の古老の人ぁ言うてだ。今でもそこ歩くと、ドンドンて音がして、ドンドンビキていう。どんぴんからりん、すっからりん。
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