22 じんつぁとまんじゅう

 むかしむかし、とってもむんつん(つむじまがり)な人いだったど。
「じんつぁ、じんつぁ、縄ないしったか」
 ていうど、
「んなえ、縄ほごしだ」
「縄ほごしなて、せっかく綯ったな、なしてほごすのだ」
「いや、ほごして綯うど、倍どころでなく、三倍も持つんだから、おれはほごして綯う」
「なんだ、今日はワラジ作りか」
 て言うど、
「んねぇ、ワラジほごしった」
 なんでかんで反対するじんつぁ、いだったど。
「雑魚釣りしったか」
 て言うど、
「いや、ほんない。雑魚投げしったんだ」
 まず、最初なの一つ二つなったって、最一(さいかづ)だて、頑張るじんつぁ、いだったど。
 ところが、そのじんつぁにも、一つの大きな弱点があって、饅頭の話出すと、顔色かえて逃げて行く。みんなも面白いがって、ほのじんつぁいて、あんまりむんつんたげらっで、()んだぐなっど、まんじゅうの話する。んだど、
「ちょっと用あっから、御馳走さま」
 なて、ちっちゃこくふるえて逃げていなぐなる。
「しかし、あだえ、えびつ(つむじまがり)語って、あだえむんつんたかりのじさま、まんじゅう恐っかないざぁ、不思議なもんだねぇ」
 て語ったど。
「んだらば、どうせこうせ、一つ、まんじゅう攻めにしてけたらええがんべ」
 ていうわけで、ある晩、町さ行って、みんな、栗まんじゅう、白あんまんじゅう、味噌まんじゅう、豚まんじゅうて、いろいろなまんじゅう買ってきた。そして、いろいろ、寄合い進むうちに、ぴょいとまんじゅう、じんつぁの前さ出した。たまげっかと思ったら、
「栗まんじゅう、こわいこわい。豚まんじゅう、恐いこわい」
 て、片っ端から食いはじめた。お盆一つ、つるっと()っでしまった。誰か言うた。
「じんつぁ、じんつぁ、あとこわいものないか」
 ていうたらば、
「濃いお茶がいっぱい、こわい」
 て言うたど。
「なして、こわいもの、ほだえして食う」
 て言うたらば、
「こわいから食うなだ」
 て言うたって。どんぴんからりん、すっからりん。
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