19 古九谷の由来

 むかしむかし、伊万里とか唐津ていうどこに、高句麗あたりから技術屋来て、非常にいい焼物が出た。
 ところが参勤交代の折、いろいろ殿さま方集まって、自慢話が出た。
「おら方の焼物は日本一だ」
 とか。ほうすっどまぁ裕福な加賀の殿さまが何とかして、おら方の焼物、おら方にもええ土あっから、教えて呉ろて言うたげんども、まずそいつだけは教えらんね。おら方の特産だから教えらんねていう。んだげんども、ほの技法を何とか習いたい。
 ほしてある侍に命じて、
「お前、今から行って習ってこい。ほの代り身分をかくして行ってこい」
 て、殿さまに命令さっで、その唐津の国さ行って習った。ところが侍なもんだから、朝げは早く起きて、薪割りする。日中は一生けんめい窯さくべ方する。まずすばらしい二人前、三人前の勤めをした。ほしてはぁ、そこの旦那さま、そっくり気に入ってしまった。
「おら家の聟になってけろ」  て言わっで、ほして娘の亭主になって、あらゆる奥義みな教えてしまった。
 ほして、自分もそろそろこれだら焼けると、こういうわけで、思っていた。んだげんどもそこ、気分ええぐなってはぁ、そこさ居つくみたいになって、奥さんもいるし、子どもも出てしまったんだし、ほうしたれば加賀の方から密偵のような者行って、
「早く、帰れ、早くおぼえて帰れ」
 ていう矢のような催促。帰らねどお前の家は断絶するという、きつい達し。何とも仕様なくて、ある日帰ったど。
 ところが向うでも、人さ技術教えたらば、お家断絶するというきつい法律あったんだど。ほして帰って来いというもんだから、何とも仕様なくて、それは主君のために帰って来たんだど。
 ところが、あれはやっぱり廻し者だったかというわけで、藩から目つけらっで、ほの家は断絶さっだんだど。
 んで、今度、加賀さ帰って来て、こうこういうわけで、向うで抹殺されるに相違ないから、その家族ごと全部つれてこいというわけで、向うさ行って、みな断絶してはぁ、みな殺さっではぁ、その家も焼がっではぁ、跡も形もなかったどはぁ、ほしてこっちさ帰った侍が、やっぱり窯つくって、土見つけで、うわぐすり作って焼き始めて、ほん時の絵模様というものは、親子仲よく暮しった。ほがらかに暮しった絵ばっかりが多かった。それが古九谷の由来だったど。どんぴんからりん、すっからりん。
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