14 (なま)()(ぜき)

 むかし、中川部落(上山市中川)と宮生部落(上山市宮生)と水利権、いわゆ る水けんかが始まった。
 ところが、どうしても永野(上山市中川・永野)勢が強くて、堀切りから()()()作って、生居(上山市宮生・生居)の方さもってくる。向うの方は堀切りから永野の方さ流す。ほんで、何としても楢下さお願いすんなねというので、願いにきた。て、楢下ではけんかみな大好きで、力持て余してばりいたもんだから、どういうことやったかていうど、石弓というもの作った。石弓ていうのは、バイタ(棒)を一尺五寸ぐらいに麻ひもを()って、麻糸くっつけて、その先さ石ば縄でくるんで、ぐるぐる振り廻して遠心力利用して投げてやっど、普通の手で投げるより倍も、上手な人は三倍も投げっかった。宮生の生居衆は、ほこでちょうどええような石みな集めて、川原前から、ほして高台に背負って行った。楢下衆は、ほっから石弓さ掛けてビュンビュンと永野勢の方に投げてやった。ところが人気(ひとけ)もないどこから、石はぼんぼん、ぼんぼんふっとんでくる。
「ははぁ、こりゃ楢下衆が加勢したな」
 ていうど、これは駄目だ。楢下勢加勢したんではとてもかなわねていうんで、中川勢はそっから退却した。ここぞとばかり生居勢は、土あいを、どんどん掘って、こっちの方さ水もってきたど。
 それで、ことなきを得たというわけで、楢下さ、
「どこでもええから、一番ええどこ取ってけらっしゃい」
 ということで、三千刈を楢下さくれたんだど。大田中というどこにある。
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