13 山の神

 ある木こりが山さ行って、木切んべと思った。
 あるとき、ところが、何だかその日に限っておかしい。ほしたらばほのちょうどヒョットコ面かぶった人が出てきて、
「今日、木伐んな」
 て言うた。
「今日、木伐んな、なて、なしてだ。おれは木伐る。おれは木伐んないで暮さんねなだから、今日伐んなだの、明日伐んなだのていらんね。なんだ、にさ、ほだな格好して、木伐んななて、人さ何言いに、ほだなこと指図する」
 ていうので、斧振り上げだれば、すばらしいカラ木返しの音した。ほしたけぁ、体中しびっでしまって、振り上げた斧降すどころか、だんだん目も見えねぐなるようなことになった。
「ああ、こりゃ困った。山の神さまにでも、祟らっだんであんまいし」
 ていうことで、一生けんめい山の神さまさ悪るかったということで、念じたれば、だんだえそれが治ってきたけぁ、そのヒョットコみたいな顔だと思ってたの、こんど神主さまの顔に変って、ほして、
「今日は山の神さまが木を数える日だ。今日木を伐ってはなんねぇぞ」
 て言わっで、その人はまず木伐りをやめて帰ってきたったて。
 んだから、それからというものは、この辺では、彼岸の中日は山の神さまが、木勘定する日だと、こういうわけで、木伐らねことしったど。どんぴんからりん、すっからりん。
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