12 大工のおかた

 むかし、家のたてまえの時、(おなご)衆の鏡とか、髪の代りに麻とか何とか、いろいろ、ああいう風な使うのは、みんなこの、女のことから始まった。
 ある時、お観音さま建てるとき、ある大工さんが前の御拝柱、間違って短かく切ってしまった。
「いや、困ったこと始まった」
 したら、
「何ほだえ、とおちゃん心配している」
「こういうわけで、柱五寸短かく切ってしまった」
「あら、ほだな造作ないっだな。前さ袴はかせっどええっだな」
 ていうわけで、金の袴はかせて、はいつかくして、袴はかせて難なく行ったど。ところが、かかに教えらっだとなっど、恥になるというわけで、その奥さんは殺してしまった。
 して、夜な夜な悩まさっだもんだから、はいつの供養のために、女衆のものを飾るという所と、もう一つは……。
 風がきて、風が来て、何ともたてまえさんねがったど。その風なんとか防ぐ方法ないべかというたら、そこの奥さんが、
「前さ一丈もある風車こしらえ、んだど、その風車で風ぁ切れて、右と左さ風ぁ切っで、風車で、風がなくなってしまうから、そん時たてまえしろ」
 て教えたから、殺さっだど。
 ていう説と二つあっどていうことだけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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