25 まえたけ

 まえたけっていうのは、うれしくて踊りおどっから〈舞いたけ〉だって。踊りおどるほどうれしいから、そういう名前ついだんだど。
 笑いたけて言うな、(なえ)ったて、おもしゃぐなって、おもしゃぐなって、仕様なくて、笑わんなねて。笑いたけには〈大わらいたけ〉と〈小わらいたけ〉てあるって。
 (せん)に、殿さまさ、笑いたけ、秋さかとって干しておいて、挽き臼でひいて、粉にして、春先、はいつ持って行って、そこの城の殿さま笑ったことない殿さまだったから、いつかその殿さまば、何とかして笑わせてみっだい、笑わせてみっだいて、みんな考えていたげんど、一言も笑ったことないがったて。
「はいつ、んだらば、おれ行って笑わせてみんべ」
 ていうて、笑いたけ(たが)って、城さ行ったど。最初、関所みたいなところで門番が、
「どさ行ぐ」
 て、しらべられたど。ほしてっどほこさおさえらっで、
「お前、何と名付った」
 とか何のて言わっで、
「こんどいうぞう」
 ていうど「今言え」なて言わっで、荷物いきなり降して、「今きたよ」ていうたら、「今きたな、わかってる」ていうたど。〈今〉ていうな姓で、〈きたよ〉ていうのは名前だったど。
 ほこさ、さじ一つの笑いたけ、おっぱらまわすと、役人がウフフ、アハハ、アハハて笑って、何とも仕様なくて笑ったどこ、すいすいと中さ入って行って、殿さまさ、 「まだ笑ったことないそうだげんど、笑わせにきた」
 ていうど、
「んだら、よう笑わせてみろ」
 ていうわけで、ほこさ腰元から何から、露払いから皆いたどこさ行って、風の吹き見て、笑いたけ吹っとばしてやったど。んだど殿さま、ほれ、ほいつ嗅ぐなり、ウフウフなていだけぁ、だんだえ笑い出すのっだなはぁ。ほして御褒美もらって来たっけど。
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